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エンジンオイルの選び方:粘度と規格の合わせ方

この記事の要点

  • 粘度(0W-20など)と規格(API/ILSAC)は、取扱説明書の指定に合わせるのが基本です。
  • 最新のAPI規格・ILSAC標準は後方互換で、旧規格指定の古い車にも使えます。
  • ILSAC GF-6A/GF-6Bは2026年10月1日に廃止。後継はGF-7A/GF-7Bです。
  • 四輪用の省燃費オイルは二輪車に流用せず、二輪はMA/MB適合を確認します。

オイル選びの軸は「粘度(0W-20 など)」と「規格(API/ILSAC)」の2つです。 どちらも車の取扱説明書の指定に合わせるのが基本で、規格は新しいものほど古い車にも使える(後方互換)——この原則さえ押さえれば迷いません。 本ページは API・自動車技術会系団体・自動車メーカーの公式文書だけを根拠に、缶の表示から規格までを早見表にしました。

GF-6は2026年10月1日に廃止:API公式の Motor Oil Guide は、ILSAC GF-6A/GF-6B について脚注で「* Obsolete on October 1, 2026」(2026年10月1日に廃止)と明記しており、この日で廃止されました。 現行は GF-7A/GF-7B(2025年3月導入)、APIサービスカテゴリーの最新は SQ です。

粘度表記(SAE)の読み方:0W-20

「0W-20」のような表記は SAE 粘度分類で、2つの数字が別々の性能を表します。

「ハイフンを挟んで左側の数字は、低温時の粘度で小さいほど柔らかく低温始動性に優れます。このWはWinterの意味です。右側の数字は高温時の粘度で、小さいほど柔らかく低燃費性に優れます。」(Honda)

トヨタの取扱説明書も同じ内容を、より運転条件に寄せた言い方で書いています。

「0W-20の0Wは、低温時のエンジン始動特性を示しています。Wの前の数値が小さいほど冬場や寒冷時のエンジン始動が容易になります。0W-20の20は、高温時の粘度特性を示しています。粘度の高い(数値が大きい)オイルは、高速または重負荷走行に適しています。」(トヨタ ヤリス 取扱説明書)

API(米国石油協会)も、粘度は「ある温度でのオイルの流動能力の指標」であり、車両メーカーの推奨に従うべきとしています("Follow your vehicle manufacturer's recommendations on SAE oil viscosity.")。

缶のマークで何がわかるか(3種類の早見表)

APIがライセンスするマークは3種類あり、示している内容が違います。とくにスターバーストとシールドは「粘度で使い分けられている」点が知られていません。

マークAPI公式の定義対応する規格粘度の制約
スターバースト
API Certification Mark "Starburst"
「現行の ILSAC GF-7A のエンジン保護基準と省燃費要件を満たす」ILSAC GF-7A0W-16 には表示できない("cannot be applied to oils of the 0W-16 viscosity grade")
シールド
API Certification Mark "Shield"
「現行の ILSAC GF-7B のエンジン保護基準と省燃費要件を満たす」ILSAC GF-7B0W-16 にのみ表示できる("can only be applied to oils having a viscosity grade of 0W-16")
ドーナツ
API Service Symbol "Donut"
上半分=性能レベル(APIサービスカテゴリー)、中央=SAE粘度グレード、下半分=Resource Conserving(省資源)API の S/C カテゴリー粘度による制約なし

APIのブランディングガイドでは、ドーナツ内でSカテゴリーを2つ以上並べることは禁止、S と C を併記する場合は「API SERVICE SP/CK-4」のようにスラッシュで区切る、と定められています。

Honda公式も同じ整理で、ドーナツマークは「中央に記載されているのがオイルの粘度、上半分がAPIの制定するグレードで、下半分が燃費性能のレベルを表しています」、 ILSAC適合品には「ILSAC特有の『スターバーストマーク』を表示することが可能」と説明しています。

SAE粘度グレードと表示できるマークの対応

じつは「その粘度ではスターバーストを名乗れない」組み合わせがあります。API 1509(第24版・2026年7月)の表A-2をそのまま示します。

低温側
グレード
—162030405060
—(単粘度)—YYYYYY
0WYYZXYXYXYXYXY
5WYYXYXYXYXYXY
10WYYXYXYXYXYXY
15WYYYYYYY
20WYYYYYYY
25WYNANAYYYY

凡例(APIの注記):X=スターバーストを表示できる/Y=ドーナツを表示できる/Z=シールドを表示できる/NA=該当なし。 いずれもライセンス要件を満たした場合に限られます。

読み方の要点は3つ。スターバースト(X)が付くのは 0W/5W/10W の 20〜60 番だけ、0W-16 だけがシールド(Z)、そして 15W・20W・25W と単粘度油はドーナツ止まりです。 「15W-40なのにスターバーストが付いている」という商品があれば、表示のほうを疑ってよいことになります。

ILSAC標準の現況(GF-6は2026年10月1日に廃止)

API公式の Motor Oil Guide が示す一覧です。状態と「代わりに何を使うか」までAPI自身が書いています。

規格状態API公式の記載
GF-7ACurrent(現行)2025年3月導入。新油・劣化油の両方でのLSPI(低速早期着火)対策、タイミングチェーン摩耗保護、高温デポジット保護、省燃費性の改善など
GF-7BCurrent(現行)「SAE 0W-16 の粘度グレードのオイルにのみ適用される」。2025年3月導入で、LSPI・チェーン摩耗・高温デポジット・省燃費性など要求項目はGF-7Aと同じ並び
GF-6A廃止済み(2026年10月1日)「Use GF-7A where GF-6A is recommended.」=GF-6A指定の場面ではGF-7Aを使う
GF-6B廃止済み(2026年10月1日)「Use GF-7B where GF-6B is recommended.」=GF-6B指定の場面ではGF-7Bを使う。0W-16 のみ
GF-5Obsolete(廃止済み)「Use GF-7A where GF-5 is recommended.」
GF-4/GF-3/GF-2/GF-1Obsolete(廃止済み)いずれも「Use GF-7A where … is recommended.」

API原文(2026年10月1日に確認)の状態欄は今も「Current*」のままですが、脚注に「* Obsolete on October 1, 2026」とあるため、同日をもって廃止済みとして扱っています。 なお同じ日付は API 1509(規格本体)の附属書には記載がなく、消費者向けの Motor Oil Guide にのみ明示されています。本ページはその記載に基づいています。

APIサービスカテゴリー(Sカテゴリー)の現況

ドーナツの上半分に入る記号です。「何年式までの車に使えるか」をAPIが年で示しているので、旧車のオイル選びではこの表が効きます。

カテゴリー状態API公式の記載
SQCurrent2025年3月導入。LSPI・チェーン摩耗・高温デポジット・スラッジ対策。「API SQ with Resource Conserving」はILSAC GF-7A相当
SPCurrent「For 2025 and older automotive engines.」(2025年式以前)
SNCurrent「For 2020 and older automotive engines.」(2020年式以前)
SMCurrent「For 2010 and older automotive engines.」(2010年式以前)
SLCurrent「For 2004 and older automotive engines.」(2004年式以前)
SJCurrent「For 2001 and older automotive engines.」(2001年式以前)
SHObsolete注意:1996年以降に製造された多くのガソリン車には適さない。スラッジ・酸化・摩耗に対する十分な保護を提供しない可能性がある
SG/SF/SE/SD/SC/SB/SAObsoleteそれぞれ1993年/1988年/1979年/1971年/1967年/1951年/1930年以降の車には適さない、と注意書きが付く

後方互換については、APIが一覧の前書きで明言しています。

「For automotive gasoline engines, the latest ILSAC standard or API Service Category includes the performance properties of each earlier category and can be used to service older engines where earlier category oils were recommended.」(API Motor Oil Guide)
拙訳:自動車用ガソリンエンジンについては、最新のILSAC標準またはAPIサービスカテゴリーは、それ以前の各カテゴリーの性能特性を含んでおり、旧いカテゴリーの油が推奨されていた古いエンジンの整備に使用できる。

API 1509 第24版では、ドーナツに入れられるカテゴリーは「SQ, SP, SN, SM, SL, SJ, CH-4, CI-4, CJ-4, CK-4, FA-4」と規定されています。 また「SI」「SK」「SO」は他の組織・体系との混同を避けるため欠番です。

メーカー指定の読み方:実例で見る

メーカーは粘度だけでなく満たすべき規格まで指定しています。トヨタの取扱説明書は、純正銘柄の横に「規格の内訳」を並べる書き方をしています。

車種・エンジン区分指定銘柄と規格の内訳
ヤリス(2022.07〜)
M15A-FKS
推奨トヨタ純正モーターオイル SP 0W-16 = API SP/RC, ILSAC GF-6B, SAE 0W-16
適合SP 0W-20 = API SP/RC, ILSAC GF-6A, SAE 0W-20/SP 5W-30 = API SP/RC, ILSAC GF-6A, SAE 5W-30
アクア(2026.03〜)
ハイブリッド
推奨トヨタ純正モーターオイル GLV-1 0W-8 = JASO GLV-1、SAE 0W-8
適合0W-16=API SP/RC・ILSAC GF-6B/0W-20・5W-30=API SP/RC・ILSAC GF-6A
「API規格SP/RC、SN PLUS/RC、SN/RCか、ILSAC規格に合致したオイルをご使用ください。」(トヨタ ヤリス 取扱説明書)
「0W-20は、新車時に工場充填されている推奨オイルであり、優れた省燃費性能を発揮できます。0W-20が入手困難な場合は、5W-30もご使用いただけます。」(トヨタ ヤリス 取扱説明書)

ここで読み取れることが2つあります。

  1. ひとつは「RC」=Resource Conserving までが指定に含まれること。
  2. もうひとつは、超低粘度域では日本独自の JASO GLV-1 が指定に出てくることです。

2026年式アクアの推奨は JASO GLV-1 の 0W-8 で、取扱説明書には「JASO規格合格油の缶にはJASO GLV-1マークがついています」とあります。 0W-8・0W-12といった粘度は API/ILSAC の枠組みでは扱われないため、缶で見るべきマークがJASO側に移る点に注意してください。

化学合成油・部分合成油・鉱物油の性能差は、一般に語られる通説はあるものの、規格団体・メーカー公式による明確な定量的定義は確認できませんでした。本ページでは断定を避けています。

二輪車は別規格:JASO T 903 の MA/MA1/MA2/MB

四輪用の省燃費オイルを二輪車に流用してはいけない理由は、JASO規格の運用マニュアル(JALOS)に明記されています。

「近年4サイクル油においては、四輪車用として省燃費対応が強く要求され低粘度・低摩擦化の傾向にある。これらの4サイクル油を二輪自動車…用4サイクルエンジンに使用した場合、低摩擦性によるクラッチ滑りの発生や、低粘度性によるギヤ耐久性低下が懸念される。」(JASOエンジン油規格普及促進協議会)

グレードは3つの摩擦特性指数——動摩擦特性指数 DFI・静摩擦特性指数 SFI・制動時間指数 STI——の値で決まります。 JASO T 903:2023 の指数基準は次のとおりです(付属書A)。

評価試験項目MAMA2MA1MB
動摩擦特性指数 DFI1.30以上
2.60未満
1.45以上
2.60未満
1.30以上
1.45未満
0.20以上
1.30未満
静摩擦特性指数 SFI1.40以上
2.55未満
1.60以上
2.55未満
1.40以上
1.60未満
0.25以上
1.40未満
制動時間指数 STI1.25以上
2.65未満
1.50以上
2.65未満
1.25以上
1.50未満
0.00以上
1.25未満

規格の注記:「MA、MA2、MA1 は 3 指数(DFI、SFI、STI)ともそれぞれ表の範囲にあること。」 「なお MA は届出者の必要に応じ、表-2.1 の指数基準によって MA2 もしくは MA1 に分類でき、それぞれを1油種として届け出ることができる。」 MB は「二輪車用4サイクル油にとって低摩擦特性油として位置づけられる」とされています。

つまり MA1<MA2 の順に摩擦が高く(クラッチが滑りにくく)、MB は最も低摩擦で、MA と MA2/MA1 は上下関係ではなくMA の中の細分です。 「MA2のほうがMAより上位」と説明されることがありますが、規格上はMAの範囲を届出者が絞り込んだものという関係です。

JASO は二輪とディーゼルの規格体系

JASO(自動車技術会が定める日本自動車規格)は二輪車用4サイクル油(MA/MA1/MA2/MB)、ディーゼル油(DH/DL系)、超低粘度のガソリン油(GLV-1)を扱います。

ディーゼル側は日本自動車工業会(JAMA)が経緯を公開しており、2017年に DH-2F(大型車用DH-2に省燃費性能要件を付与)と DL-0(API CF-4相当品質)が追加され、 従来の DH-1/DH-2/DL-1 と合わせて5カテゴリーになりました。

四輪ガソリン乗用車の主規格はあくまで API/ILSACで、JASOが出てくるのは 0W-8/0W-12 のような超低粘度域(GLV-1)です。

間違えやすい落とし穴

  • 「新しいAPI規格は旧車に使えない」は誤解:最新規格は後方互換で、旧規格指定車にも使えます(上記API引用)。
  • 逆に古い規格を新車に使うのは不可:APIは SH 以前を「Obsolete」とし、
    「Caution: Not suitable for use in most gasoline-powered automotive engines built after 1996. May not provide adequate protection against build-up of engine sludge, oxidation, or wear.」(API Motor Oil Guide、SHの注意書き)
    拙訳:1996年以降に製造された多くのガソリン車には適さない。スラッジ・酸化・摩耗に対する十分な保護を提供しない可能性がある。
  • 0W-16 にスターバーストは付かない:0W-16 はシールド側です。逆に 0W-16 以外にシールドは付きません(API 1509 表A-2)。
  • 四輪用オイルを二輪に流用しない:クラッチ滑り・ギヤ耐久性低下のおそれ(JASO T 903 の趣旨)。二輪は MA/MB 適合を確認。
  • ディーゼル用(API C系)とガソリン用(API S系)は別体系:APIは
    「"C" category oils have been formulated primarily for diesel engines and may not provide all of the performance requirements consistent with vehicle manufacturers' recommendations for gasoline fueled engines.」(API Motor Oil Guide)
    拙訳:「C」カテゴリーの油は主にディーゼルエンジン向けに配合されており、ガソリン燃料エンジンについての車両メーカーの推奨に沿った性能要件をすべて備えているとは限らない。
    と明記しています。指定に従ってください。

よくある質問

「0W-20」「5W-30」の数字は何を表していますか?

ハイフンの左側(0W・5Wなど)は低温時の粘度=始動性、右側の数字(20・30など)は高温時の粘度を表します。Wは「Winter(冬)」の意味で、左が小さいほど低温始動性に優れ、右が小さいほど高温時に柔らかく低燃費寄りになります(Honda公式)。トヨタも取扱説明書で「Wの前の数値が小さいほど冬場や寒冷時のエンジン始動が容易になります」「粘度の高い(数値が大きい)オイルは、高速または重負荷走行に適しています」と説明しています。最終的な適合粘度は必ず車の取扱説明書で確認してください。

ILSAC GF-6A/GF-6B のオイルはいつまで使えますか?

GF-6A・GF-6B は2026年10月1日に廃止されました。API公式のMotor Oil Guideが、脚注に「* Obsolete on October 1, 2026(2026年10月1日に廃止)」と明記していたとおりです。同表は GF-6A について「Use GF-7A where GF-6A is recommended.(GF-6Aが推奨されている場面ではGF-7Aを使う)」、GF-6B について「Use GF-7B where GF-6B is recommended.」としています。取扱説明書がGF-6A指定でも、APIの案内どおり後継のGF-7Aを選べば要件を満たします。

取扱説明書の指定と違う粘度を入れても大丈夫ですか?

自動車メーカーは基本的に車種ごとに指定した粘度・規格のオイルを使うよう案内しています。ただしトヨタの取扱説明書のように「0W-20が入手困難な場合は、5W-30もご使用いただけます」と代替を明記している例もあります。指定外粘度の可否や影響は車種・使用条件で異なるため、必ず取扱説明書またはディーラーでご確認ください。

API規格が新しい(SP・SQなど)なら古い車に入れても平気ですか?

APIの公式資料(Motor Oil Guide、英文)は最新のILSAC標準またはAPIサービスカテゴリーについて「includes the performance properties of each earlier category and can be used to service older engines where earlier category oils were recommended」(それ以前の各カテゴリーの性能特性を含み、旧いカテゴリーの油が推奨されていた古いエンジンの整備に使用できる/拙訳)と述べています。つまり新しい規格は原則として後方互換です。逆に古い規格(SH以前)のオイルを新しい車に使うのは非推奨とされています。

四輪車用のエンジンオイルをバイク(二輪車)に使えますか?

注意が必要です。JASO規格の運用マニュアル(JALOS)には、四輪車用として低粘度・低摩擦化された4サイクル油を二輪車に使うと「低摩擦性によるクラッチ滑りの発生や、低粘度性によるギヤ耐久性低下が懸念される」と明記されています。二輪車には JASO T 903 の MA/MA1/MA2/MB 適合を確認したオイルを選びます。

缶の「スターバースト」と「シールド」はどう違いますか?

どちらもAPIの認証マークですが、対応する規格と粘度が違います。スターバーストは現行のILSAC GF-7A適合を示し、API公式資料では「0W-16の粘度グレードの油には表示できない」とされています。シールドは現行のILSAC GF-7B適合で、「0W-16の粘度グレードの油にのみ表示できる」とされています。つまり0W-16のオイルを探しているならシールド、それ以外の粘度ならスターバーストが目印です。

API/ILSAC/JASO は各国の業界団体が定める民間規格で、随時改定されます(例:ILSAC GF-6→GF-7 への移行)。本ページは規格・粘度の一般的な解説で、個別車種への適合や指定外オイルの使用可否を保証するものではありません。 掲載の車種例は特定の型式・年式の取扱説明書の記載であり、同じ車名でも年式・エンジンで指定は変わります。購入前に必ず自車の取扱説明書の最新の指定をご確認ください。

出典

(公式の一次情報に基づき随時見直します)